「ストーリーマッピングをはじめよう」を読んだ。
 

ストーリーマッピングをはじめよう
ドナ・リチョウ
ビー・エヌ・エヌ新社
2016-12-21


読むキッカケ

私自身は、HCD-Netの発表会で、「ユーザー行動を時系列に並べる各種方の開発現場における需要」というタイトルで発表した。

ユーザーの行動を時系列に沿ったストーリーとして整理する手法は、「カスタマージャーニーマップ」、「サービスブループリント」、「ユーザーストーリーマッピング」など、様々ある。それぞれには全体像の可視化や、インタビュー結果のまとめ、要件・仕様のまとめといった様々な役割があり、各開発現場でカスタマイズしながら受け入れられている。

そのような中で、この「ストーリーマッピングをはじめよう」は、どんな位置づけになるのか気になって読んだ。

ストーリーの構造

本書で紹介されている「ストーリー」は、「ユーザエクスペリエンスのためのストーリーテリング」で紹介されていたストーリーのパターンのうち、最も強力な「Heroパターン(英雄パターン)」を基本構造として、各現場に適用しやすくしたものだと考えられる。
(※Heroパターンは、「日常の世界→冒険へのきっかけ→はじまりと試練→冒険の世界→目的の達成→日常世界への帰還」という流れでストーリーを構成するパターン)




ややこしくなりがちな「ストーリー」をシンプル(かつ強力)な構造と限定することで、その利用方法にフォーカスを当てていて、面白かった。

ストーリーの種別

この本のもう一つ面白いところは、「コンセプトストーリー」「オリジンストーリー」「ユーセージストーリー」という3つのストーリーの種別を提示しているところである。

こういったストーリーを書く段階になると、よく出てくるのが「粒度」問題である。個別のストーリーを出していくと、何となく収まりが悪いものが出てきてしまい、手が止まってしまうことがある。(おそらく)そういった問題に対して、本書は3つの種別を提示することで、今出そうとしているストーリーのフォーカスを意識することで、粒度を揃えていく(ある程度揃った粒度のストーリーにする)ことを考えているのだろうと思った。

 

まとめ:ストーリーの功罪

何故ストーリーを使った整理をするのか。ストーリーを使うメリットは何か。
先に、ストーリーを使うデメリットを挙げるとすれば、ストーリーは時系列でしか整理できない。複数の主人公が絡むようなシナリオは「一方その頃あちらでは…」といった、やや不自然にぶつ切りになってしまいがちである。
しかし、それを補ってあまりあるメリットがあるから、世界でストーリーが使われるのだろう。私の考えでは、ストーリーにすることで「人間に備わった一般的な認知能力」を最大限に使い、早期にコンセプトやつくるものを検証できるからだと思う。言葉にすることで違和感を感じる。並べてストーリーにすることで違和感を感じる。そういったものから学びを得て、開発に活かしていくことに意味があるのだろうと思う。

人間が培ってきた道具=ストーリーを使って、人間に役立つものを開発する。だからこそ、面白いのだろう。 

ストーリーマッピングをはじめよう
ドナ・リチョウ
ビー・エヌ・エヌ新社
2016-12-21