前置き
「モバイルフロンティア よりよいモバイルUXを生み出すためのデザインガイド」の翻訳者の方々から弊社(株式会社セカンドファクトリー)に献本頂きました!ありがとうございます。
私はもちろん自分で購入したのですが、感謝の意味を込めて色々書きます。
各セクションや見出しなどは、アマゾンの内容紹介か、著者の安藤さんのブログなどをご参照ください!
実際の現場を観ること。
本書前半で繰り返し言っていることは、「いいから外に出ろ!」だと思いました。一番端的に表されているのは、「3章:デンバーのピーナッツバター:モバイルの利用状況のデザインメソッド:現場でブレストする」に書かれているかと思います。著者は「会議室外でのアイディエーションセッション」と呼んでいるようですが、会議室以外に出ることの重要性を述べています。
これは、デザインにおけるProblem Findingでは繰り返し訴えられていたことですが、モバイルを基本とするこれからのデザインでは特に重要になる、といった意味であると受け止めました。
これまでも、従来デザイナーと呼ばれる人は積極的に外に出ていたと思われます。ただ、デジタル分野でのデザインが成長につれ、現場に出ないデザイナーが多くなったのだろうなぁと推察されます。イメージではPCに向かってPhotoShopやFireWorksでお仕事している方ですね。そういったことが良いか悪いか議論したいのではなく、現場の利用状況を観ることの重要性を再認識しましょう、ということなのだと思います。
実際にどう使われているか、どう使えそうかといった議論は、モバイルが急成長している現在において、想像だけでは補えないものでしょう。
人に寄り添ったシステムを創ること。
では、何で現場を観ることが重要なのかというと、システム側が使う人や状況に合わせることがある程度可能になったからであると思います。推測ですが。
これまではある状況下で、システムがあって、それに人が合わせる、といったことの方がコストが小さい環境だったのではないかと思います。イメージとしては【とある勤怠システムがあって→(本当はこういうフローなのだけど、人側でこう対処すればいけるというフローであればシステムのコストが小さくて済むので)人がシステムに合わせる→コストが小さくなる】です。
これが、モバイルになると、画面領域の大きさや処理能力の関係で人がシステムに対して合わせられる幅が小さいので、システム側が人に合わせざるを得ないといった環境になるのかなぁと読んでて思いました。
そのため、システムを組むためにデザインしている身としては、そのシステムが使われるためには、利用者に合わせるようにデザインすることが必須となります。そのために必要な考え方、パラダイムの捉え方、原則、エコシステムなどが本書の前半(と8章)にまとまっていると感じました。
過去に学び、未来に繋ぐために
本書の後半は、「モバイルUXパターン」(5章)ということで、現在まででモバイルで有用であると思われるUIパターンについて述べられています。これは直近の試行錯誤で定着しつつあるものをパターンとして記載されているので、新しいUIパターンを考える上でも踏まえるとよりよくなると思い、有用性を感じました。
6章ではプロトタイピングについて語られています。ここは正直、人間中心デザイン(HCD)の文脈で語られていることの方が大きいなーと思っていて、興味が湧いた人は「情報デザインの教室 仕事を変える、社会を変える、これからのデザインアプローチと手法」とか「UXデザイン入門―ソフトウェア&サービスのユーザーエクスペリエンスを実現するプロセスと手法」を読むと補完できる気がします。
7章では「モーションとアニメーション」ということでアニメーションからUIパターンのヒントを得る観点で書いてあります。以前この原著の読書会に参加させていただいた時は「うわぁ…ちょっと無理矢理…うわぁ…」とか思ってしまっていたのですが(失礼)、今読んでみるとそんなに違和感がなく、いいヒントになると感じました。
まとめ。
知り合いの方々が翻訳メンバーであることを差し引いても、デザインに興味のある方には良書だと思います。今後ワークショップなどが継続的に開催されるようですので、参加してみたいと思います。
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