宣伝:今年(2015年)の7月頃、東京で同内容のワークショップを開催する予定なので、もしご興味あれば、何らかの手段でchachakiまでご連絡ください。

 3月9-10日に、福島県立医大に行き、公衆衛生学講座というところで主催された、質的データ分析法「SCAT」の講習会(ワークショップ)に参加してきました。2日間開催するワークショップなのですが、とても得るものが多いものでしたので、簡単にレポートしたいと思います。
 

質的データ分析・質的研究について

1日目の午前中は、質的研究デザインについてと、その方法について講義形式で行われました。
私は聞きかじっただけの状態なので、可能であれば直接講師の大谷さんのお話を聞くか、下記に挙げる「質的研究ハンドブック」などを参照いただくのがよいと感じました。
 





講義は、質的研究の考え方、手続き、意義の外観を得ることを目的としていました。まず、質的研究のよく見られる誤りについて説明があり、さらにそれを孫引きすることで誤りを真似してしまっており、しかもそれに研究者自身が気付いてないことが多い、という問題認識から始まりました。まずは、自分の分かる範囲に押し込めて理解しようとせず、研究の背景となる認識論を学ぶことの必要性を認識しました。
質的研究は、量的研究との対比で、量的研究が「手続きの量的客観性」が「知見の一般性や普遍性」を担保するという試みなのに対して、質的研究は「個別性や具体性の深い追究」が「知見の一般性」を担保するという考えに基づいています。どちらのアプローチも、究極的には一般性・普遍性のある知見を追究することを目的にしています。
質的研究の手続きとして、以下があります。

  1. 研究的問い(Research Question)の設定
  2. 研究デザイン(Research Design) 
  3. データ採取(Data Collection)
  4. データ分析(Data Analysis)
  5. 理論記述(理論化)(Theorization) 
恥ずかしながら、Research Questionの The FINER Criteria (Feasible,Interesting,Novel,Ethical,Relevant)を知らず… また、量的研究では得られない知見(具体的状況・過程の記述、個人・集団の内面的現実の解明、構造の解明、洗剤する問題の発見)を得ることが大切になるとの指摘は、心に留まりました。
データ採取とデータ分析については、質的研究では分けないこと、データ採取とともに分析を開始し、最後までデータ採取を継続する、ということが衝撃でした。言われてみれば確かにそうなのですが、あまりにもステップを分けることに慣れてしまい、疑うことがありませんでした。
理論記述では、分類として「記述的(descriptive)」、「予測的(predictive)」、「処方的(prescriptive)」があること、そしてすべての基本はあくまで「記述的」であり、これを理論として書くことの重要性を学びました。

SCATについて

SCATの詳細については、SCATのダウンロードセクションにある論文を見るのが一番早いです。
SCATは、「明示的で段階的な分析手続き」があり、「比較的小規模のデータに適用可能」で、「初学者にもきわめて着手しやすい」という特徴を持っています。SCATを使うことで、分析手続きと経過は常に可視化され、採取したデータ全体を使うことになります。

ワークショップについて

ワークショップは、1日目の午後と、2日目の午前〜昼を使ってSCATが行われました。具体的な進め方は規定されていないのですが、私が入ったチームでは、抽出したテキストn個すべて対して、4stepを1ステップずつ進む方法を取りました。(他に、テキスト1つに対して4stepを実施し次のテキストに進む、という方法もあるようです。)
 

感じたこと

自分として衝撃だったのは、分析を進めていく際の方向性の話でした。SCATのページのtipsとpitfallsに書いてありますが、向かう方向性がこれまで漠然と「抽象」に進んでいて、ここに対する解像度が小さかったと感じました。実際には、以下のような解像度があり、その奥深さを感じるとともに、何か指針を得た気持ちになりました。
テクスト
----------------------------------
読み ←-------------------→ 解釈
事実 ←-------------------→ 意味
表面 ←-------------------→ 深層
外見 ←-------------------→ 内面
前面 ←-------------------→ 背景
顕在 ←-------------------→ 潜在
結果 ←-------------------→ 原因
客観 ←-------------------→ 主観・主体的解釈
客体 ←-------------------→ 主体
理解 ←-------------------→ 構成
一般 ←-------------------→ 特徴
事実 ←-------------------→ 物語
存在 ←-------------------→ 実存
product ←-----------→ process
----------------------------------

08

 自分は、デザイン分野に応用されたKA法しか知らない状態でした。今回、SCATをやってみて、KA法をやる際にも活きる指針を得たように感じました。
KA法は、インタビューデータから切片化した「出来事」を抽出し、そこからアブダクションとして「心の声」でガイドしながら、ユーザーにとっての「生活価値」を導出し、その生活価値をマップ化する方法です。SCATを体験した今、あえて批判的にで言うと、KA法のアブダクションの具合と生活価値の書き方は、あまりガイドされておらず、実施者の主体的な解釈としては同じものの、方向性が異なってしまう懸念があるように思いました。具体的には、生活価値が「処方的」になってしまったり、「予測的」になってしまったりする懸念です。
そういう意味で、複数の方法、その中でもSCATを体験できたことは、とても大きな学びを得ることができました。

 

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