人間中心デザイン|産業技術大学院大学

■プログラムの概要

 本プログラムは、「高いユーザビリティ、よりよいユーザ体験(UX)を提供するものづくり」を実践するための、人間中心設計の諸理論並びに関連分野の知識の習得と、企画・デザインを行う具体的な手法及び技法の習得を目的としています。

 特に、現在産業界を中心に用いられている、人間中心デザインの諸手法の修得に力点を置いている。人間中心デザインのための発想法からコンセプトデザイン手法、またそれらコンセプトを検証する方法やユーザビリティ評価法まで、一貫した内容を体系的に、演習を通して実践的に学ぶことができます。

 また、人間中心デザインの諸手法の活用が求められる製品デザイン分野の基礎的な知識や技法についても学ぶことにより、より実践的で広い活用範囲のスキルの構築を目指しています。

 これらの科目は、人間中心デザイン及び製品デザイン分野の第一人者が講師を務めており、実践的で最新の内容を体系的に学べる点が、本プログラムの特徴です。

私はこの教育プログラムの2010年度の履修生でした。それまではデザインとはなんぞや、といったことすら分からない単なるソフトウェアのプログラマでしたが、ここで学んだおかげでだいぶスッキリしました。



UIデザインのための企画プロセス

おそらくすごくセンスがあったり、豊富な経験があったり、美大でデザインを学んだりした方は、人間中心デザインに関しては意識せずに実践できているんだろう、というのが最近の私の考え方です。(使う人のことを考えないUI、というのは本来あり得るものではないので、関わる人間のことを考えますよね。)

でも、私含む一般の人は、それほどセンスがあるわけでもなく、それに対してはデザイナーの暗黙知が言葉や手法となっている人間中心デザインという考え方・手法群はとてもありがたいものです。

このプログラムで学べるものは、UIのデザイン手法ではなく、その一歩手前のどう企画するか、といった部分だと思っています。一部「ユーザービリティ評価法」という企画ではなくユーザー評価のカリキュラムもありますが、総じて。


ソフトウェアエンジニアが学ぶ意味

自分はソフトウェアエンジニアなので、その視点からの方がいいかなーと思って書いてみます。

毎年、ソフトウェアエンジニア方面からの参加は30名中数名?と少ないように思いますが、ソフトウェアのシステム設計も、最近は企画の重要性が大事になってきていますよね。「何を作るか(What)」から「どう作るか(How)」へシフトして、最近は「なぜ作るのか(Why)」にフォーカスが当たり始めてると思います、個人的に。ソフトウェアエンジニアとしては、システムの「どう作るか(How)」を企画と結びつけるような視点だと、人間中心デザインを学ぶ意味ってあるんじゃないかなーと思います。


人間中心デザインは銀の弾丸じゃない

もちろん、人間中心デザインはいわゆる「銀の弾丸」ではありません。学んだからといって、実践できるようになるのは(大目にみて)ユーザーを調査・分析したり、それをプロトタイピングして、ユーザー評価を行える、といったユーザーサイドの部分です。

実際にビジネスに応用するには、市場環境や競合を調べたり、技術的な課題であるとか、特許の壁があったりとか……様々な要因が絡むので、人間中心デザインを学んだからといって、いい企画が必ずできるわけではなく、足掛かりが得られるぐらいかなぁと思っています。なので強く薦めにくいですがw

ただ、ユーザーの内面(ユーザーエクスペリエンス)を考えて企画する、といった部分で体系立った概念は他になく、また、体系立てて学べるのはここのプログラムしかないのが現状です。このプログラムは年1回しか開講しませんので、もしご興味があれば受講してみるのもいいんではないかなーと思います。

人間中心デザイン|産業技術大学院大学


その他

これは宣伝ですがw、このプログラムの2010年度/2011年度履修生を中心に、今ではそれ以外で人間中心デザインの実践に興味のある方も多数参加している「hcdvalue」という社外勉強会コミュニティがあります。私もそのメンバーなのですが、ワークショップを企画してやったり、人間中心デザインに関連する文書の読書会をしてみたり、色々やってます。コンセプトである「現場で使える人間中心デザイン(HCD)の実践」にもし興味があれば、お近くのメンバーにお声掛けください。